美女と珍獣


「す、すいませんっ!」


あたしは慌てて彼を追いかけた。

振り返った彼の表情は、着ぐるみのせいで全くわからない。



「あたしの…、財布知りませんかっ?」

「……サイフ?」


彼が首を傾げたため、ぐらっと着ぐるみが揺れた。

どうやら知らないみたい。


と、いうことはヤンキー達から逃げて走っていたときに落としたんだ。


取りになんて戻れないし、でも無一文なんてどうしようもない。



「おかね、ない…?」


俯いて今にも泣き出しそうなあたしをのぞき込むような仕草をしながら、彼は言った。


「無いです……」

下唇を噛んで泣くのを堪えながら、あたしはそう答えた。


「家、は?」

「……か、帰れませんっ!」


ますます目が潤んでいくあたしを見た彼は、


うーん…

と、考え込むような仕草をした。



それを見つめること、数分。





「じゃあ、俺の家、来ればいい」




唐突にそう提案し、


ね?

と小首を傾げる彼を、あたしは目を丸くして見つめた。


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