美女と珍獣
「そっ、そんな簡単に良いんですか……!?」
「いーよ。俺、ひとりぐらし、だし」
そういう問題でもない気がする。
だけど、このまま誰かの家に滞在させてもらえるのはこの上なくありがたい。
でもでも!
こんな今さっき会ったような、得体の知れない人の家にのこのこと行っていいものか。
葛藤。
ど、どうしよう。
「くる?こない?」
またのぞき込むような姿勢をとる彼。
「えっと……」
「どう、するの?」
たどたどしい言葉で急かされる。
道行く人達が、着ぐるみの彼と頭を抱えるあたしに不審そうな視線を送ってくる。
ああ、もうっ。
どうせ無一文じゃどこにも行けないんだし!
「い、行きます…っ!」
あたしは腹を括ってそう言った。
「わかった。ついて、きて」
彼は2回ほど頷くと、あたしの前をすたすたと歩き始めた。
言っちゃったあとでどうかとも思うけど。
本当に大丈夫だよね……?
あたしは言いしれぬ不安を抱えたまま、着ぐるみの人の後に続いた。