美女と珍獣



「ここ、俺の、家」


歩くこと十数分。

着ぐるみさんは立ち止まってそう言った。


「ここですか!?」




たどり着いた場所は、

……大豪邸。




「えと、1人暮らしなんじゃ……」

「うん、ここに、ひとり」



あたしは唖然とした。


細かい装飾の施された門に、豪邸と呼ぶにふさわしい煌びやかな建物。

まるで古き良き時代のヨーロッパに迷い込んでしまったかのように、そこだけ世界が違った。


こんな大きな家に1人暮らしだなんて。

本当に得体が知れない……。




「入らない、の?」

「お、お邪魔させて頂きます……っ」


慌てて答えたあたしに、その人はまた首を傾げていた。


その度またぐらつく着ぐるみ。

邪魔じゃないのかな……。



♪~


突然、携帯の電子音が聞こえた。


あたしじゃない。

戸惑いがちに着ぐるみさんを見つめた。


すると彼はパカッと携帯を開いて画面を数秒見つめると、また携帯を閉じた。

どうやらメールだった様子。


ていうか見にくそうだな、着ぐるみだと。

そんなことを考えていると、着ぐるみさんがあたしに向かって言った。



「今から、ミユキ、来る」

「……はい?」



ミユキって、どちら様ですか。

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