【完】初恋
『お前何やってんだよ!ほら立て!』
「うぅ…」
拓真はあたしの手を引っ張りあたしを立たせる。
『たっく。後ろ見たら怜奈いなくてビビったじゃねぇか』
だって…。
『追いつけないなら言えよな』

だって…雑音でかき消されたんだもん。

『たっく。そんな高いヒールなんか履くから、転びやすいんだろ?』
だって…
ちょっとでも拓真に好かれたいもん。
『迷子の子猫になるとこだったんだぞ??』
「猫じゃ…ない」
『ごめん。気付かなかった俺もバカだったな。不安にさせてゴメンな?お詫びになんかおごってやるから機嫌直せよ』
「クレープがいいな」
『プッ。チョコバナナ?』
「うん」

拓真は近くにあったクレープ屋さんでクレープを買ってくれた。


今思えば…拓真はあたしがいないのに気づいて、人ごみをかき分けて探してくれたんだよね?
そう思うと…胸がぎゅーってなったよ。

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