キスして☆イケメンな彼
こんなんじゃ、カラオケ店に着く前に私の心臓は壊れてしまう。
聞こえてしまいそうな心臓の音。
龍之介さまに伝わっちゃうよ。
…静まれ、私の心臓。
私は龍之介さまに抱っこされていた。
硬い龍之介さまの胸板が頭とぶつかる。
ダイエット、しておけばよかった。
まさか龍之介さまに抱っこしてもらうなんて考えてなかったから。
「…大丈夫ですか?」
震えた声で龍之介さまに聞く。
「え、何が」
そういって視線を下ろした。
私の視線がぶつかる。
ドッキューン。
私のハートは一瞬にして砕ける。
龍之介さまの視線一つで。
「わ、私重たくないですか…?」
顔を真っ赤にして視線をそらす。
「全然。むしろ軽い」
そういって私を少し揺らす。
「無理しないで下さいね」
「無理なんてしてねーよ」
そっと視線を景色に移す。
小さく笑った龍之介さまの横顔。
いつまでもその笑顔を独占していられたらいいのに。
私は心でそう思った。
でもそんな時間を束の間。
「幸乃ー!」
笑顔で由香里が手を振っている。
もう着いてしまった。
カラオケ店松山。