小悪魔な君に天使のキスを
優もさっと立ち、殴り返す。
「ゔ、っ…」
俺も喧嘩は強い方だけど、優に勝てるわけはなくて。
優は殴りかかろうとする俺の両腕を片手で抑えた。
俺は息がゼェゼェで、きっと唇も目の下も切れているだろう。
優は頬がかすかに赤くなっただけで。
「…っ」
優の強さを感じてしまう。
優は、俺の両腕を離して、窓の近くに歩いた。
窓の外を見て、そっと呟く。
「好きって気持ちだけじゃ、どうにもなんねぇことだってあるんだよ」
その言葉を聞いて、ハッとした。
幼い頃から、人に弱みを見せず、人に心を開かなかった優の…覗いてはいけないところを覗いてしまった気がしたから。
俺が優に近付くと、優は静かに言った。
「帰れ」
「、、、優」
「帰れ!」
その言葉が、優の哀しみを表している気がして、俺は部屋に戻った。
戻ることしか、できなかった。