冬のための夢
守はつい忠士に向かって声を出した。
      
「あの人キレイだよな。今位の時間によく見るけど・・・」
       
「なんだ、狙ってるのか?」
                    
忠士も身を乗出して彼女を見つめた。
      
「大学生かな?男いるのかな?」

めずらしく忠士が女の子に関心を示した。彼女の魅力なのだろうか?

「でもな、俺はお前とは違う。まずは勉強して大学へ入る。そして彼女を作る。今は無駄な事はしない」

忠士は守に言うというよりは、自分自身に言い聞かせるように言った。
守はそんな忠士の言葉など聞いてはなかった。
        
二人が見つめているのを知ってか、知らずか、女の子は来た電車に乗り込み行ってしまった。


< 24 / 119 >

この作品をシェア

pagetop