冬のための夢
「『二十歳の原点』って言うの。私の一番好きな本」

「どんな本なの?」

「女の子が自殺しちゃう話」

「・・・、なんか、怖いな」

守は、何故だか雪子がこの本に飲み込まれ、どこかに連れ去られる感覚に陥った。

「結局、社会も人間も何も変わってないのよ。昔も今も・・・」

雪子は、まるで守の後ろにいる者(後ろには誰もいないのだが)に向かって言った。

「何が言いたいの?」

守は尋ねる。

「・・・、分からない、私にも・・・」

雪子はそう言うと守の唇に自分の唇を重ねた。
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