年下の彼氏
「あのね、あんたの惚れっぽさを直したのは紛れも無くあの子なの!それがどういうことを言ってるか分かる?」
こんなに必死な桃子は初めて…。
「いや…、分かんない…。」
下を向くと知らず知らずのうちにため息をついた。
目には大粒の透明な水が溢れて今にも飛び出していってしまいそう…。
本当は分かってた。
あんなにうるさかったピコーンも、鳴らなくなった。
孝之くんを最後に。
それが意味することって・・・。
この前の夜も会えて嬉しかった。
ずっと会ってなかったから。
初めてだったけどキスされても嫌じゃなかった。
あの笑顔が好きだった。
子供みたいにくしゃって笑うあの笑顔。
声も好き。見た目よりももっと低いあの声が。
あの背中が。あの仕草が。
この前会ったばかりなのに、こんなにも孝之くんの存在がおおきくなっていく。
あたし……。
「あたし……。本…当の恋…、見つけられたの……?」
桃子は驚いた。
いつも辛い時でも笑っていた菜月が初めて涙を見せた。
惚れっぽいことでいつもからかってきてかけど本当は悩んでたんだ。
人一倍、平気な振りして、人一倍、悩んでたんだ・・・。
桃子ももらい泣きしたみたいでうるうるさせた目で手をぎゅっと握った。
「うん、そうだよ…。菜月は本当の恋を見つけたんだよ…。よかったねぇ…。」
体育館の隅ですすき泣きが静かに響いた。