年下の彼氏
「はぁー!歌ったぁ!」
うーんと背伸びをして後ろに居る孝之くんの方に振り返った。
髪がなびいて高校生のあたしがなんだか綺麗な大人の人になった気がした。
「ありがとねっ!今日は付き合ってくれて。楽しかったよ。」
後から付いてくる孝之くんはお財布を抱えてぶつぶつ言っていた。
「誘ったのは菜月さんなんだからおごるのは普通菜月さんっしょ?」
あたしはまぁまぁと言いながら孝之くんの背中をびしっと一回叩いた。
思ったよりがっちりしていて、鼓動が高鳴った。
叩いたのにまったく気にしないですたすたと前を歩いて行った孝之くんは大人だ。
「帰るぞー。」
彼がぼそっと言ったのであたしは頷いて今度は彼の後を付いていった。
「しょうがないっ!あたしが家まで送ってやるかっ。」
張り切っていったあたしの隣でぶはっと吹き出して
「たくましいな!」
とだけ言った。
孝之くんはお言葉に甘えるようであたしたちは歩いた。
電灯から作りだされる二人の薄い影は少しだけ小さかった。