年下の彼氏

いつだか桃子が言ってた。

「男とカラオケに行ったら絶対友好度アップだよー。お近づきになれる大チャンスっ。」
なんておちゃけてたっけ。






まんざらじゃないみたい。

あたしと孝之くんはずっと仲良くなれた気がした。

カラオケぐらいだけど。




暗い道は嫌いじゃなかった。

バイトの帰りはいつも一人でこの道を歩いた。

今日は二人だけど。

いつもよりもっと心強い。

夜の街はいろんな音が聞こえてきた。

家の下に隠れる猫の親子の鳴き声、夫婦喧嘩の罵声の声、小さな子供が弾く綺麗なピアノの音色。

夜の住宅街は昼よりもにぎやかな気がする。



「あの高校、陸上部あるよな?」

「あるよー。うちの陸部はかなり強いよ!入るつもりなの?」

「あぁ、強いって聞いたからここにした。菜月さんは陸部なの?」

そういえば、孝之くん結構筋肉あるみたい。特に足に。

走って来たんだなぁ、今まで。力入れて来たんだなぁ。



涙がこぼれそうになった。

ぐっと唇を噛んでたくさんの星を見つめた。


< 54 / 86 >

この作品をシェア

pagetop