年下の彼氏
いつだか桃子が言ってた。
「男とカラオケに行ったら絶対友好度アップだよー。お近づきになれる大チャンスっ。」
なんておちゃけてたっけ。
まんざらじゃないみたい。
あたしと孝之くんはずっと仲良くなれた気がした。
カラオケぐらいだけど。
暗い道は嫌いじゃなかった。
バイトの帰りはいつも一人でこの道を歩いた。
今日は二人だけど。
いつもよりもっと心強い。
夜の街はいろんな音が聞こえてきた。
家の下に隠れる猫の親子の鳴き声、夫婦喧嘩の罵声の声、小さな子供が弾く綺麗なピアノの音色。
夜の住宅街は昼よりもにぎやかな気がする。
「あの高校、陸上部あるよな?」
「あるよー。うちの陸部はかなり強いよ!入るつもりなの?」
「あぁ、強いって聞いたからここにした。菜月さんは陸部なの?」
そういえば、孝之くん結構筋肉あるみたい。特に足に。
走って来たんだなぁ、今まで。力入れて来たんだなぁ。
涙がこぼれそうになった。
ぐっと唇を噛んでたくさんの星を見つめた。