年下の彼氏
「あたしは元陸部だよっ。高一の時に怪我して退部したんだっ。」
「そっか…。」
孝之くんは聞いてはいけないことを聞いてしまったと思ったのか、口を閉じた。
見せつけたかった訳じゃないけど少し悲しい顔をした。思い出すのは久しぶり。
痛くはなかった…。
ただ、頭の中が空っぽになっただけ。
少しの沈黙の後、孝之くんは星空の下で言った。
「情けねぇなぁー。オレが女の子に送ってもらうなんてさ。」
足を大きく振り上げて道端の石ころを蹴ってあたしを覗いた。
「あはは、いいんじゃない?こういうのも。」
やっと涙目から笑顔が見えて孝之はほっとした。
道の端っこの電灯が二人を燈した。
茶色とピンクのレンガのレトロなマンション。
あたしの憧れのマンション。
じゃあねと言おうとした時に後ろに誰かがいた。
ーぐいっ
孝之くんの胸倉を掴んで睨んでいる人が居た。
時が止まった気がした。