年下の彼氏
「お前っ、勉強もしないで遊び回って!なにやってんだ!!」
胸倉を掴まれた孝之くんは一瞬悲しい顔をして、睨み返した。
「親父には関係ねぇだろ…?」
孝之くんはその手を振り払い、あたしに背を向けたまま一本先に行った。
ーこの人が孝之くんのお父さん!?市長の。
見ただけだけど少しなら分かる。
市長の息子なんだから勉強しなきゃ駄目だ、いい高校に行かなきゃ親の顔がたたないってやつだ。
「あの…。私が誘ったんです。ごめんなさい、だから孝之くんを責めないで下さい。」
孝之くんのお父さんはくるっと振り返ってあたしを見た。
その顔は尋常じゃなかったんだ。
ぶるっと寒気がした。
そしてあたしを無視した。
「さぁ!!早く家に入るぞ。勉強するんだ。」
無理矢理に孝之くんの腕を引っ張る。
月はいつのまにか、雲にすっぽり隠れていた。