年下の彼氏
「ほんと悪い…。」

隣を見ると孝之くんが居た。

時計塔の針は8時15分を指していた。

あたしにとっては大丈夫な時間。

でも彼には帰らなくてはいけない時間だったんだ。




いつからだろう、あたしの門限が延びたのは…。

バイトを始めてからかな?

一番最初にやったバイトは近所の小さな遊園地の着ぐるみだったなぁ。

風船持つの結構難しいんだよね。

お母さんはバイトをすることにずっと反対していた。

でもあたしがお母さんの言葉を全部無視して押し通したっけ。

最初の給料で買ったお母さんへのハンカチ、渡した日は乾くことはなかった。




まだ中学生だもんね、あたしが悪い!

「だだだ大丈夫!あたし殴られ慣れてるし!こんなの日常茶飯事だっての!」

「ごめん、オレの親父市長になってからおかしくなっちまってさ…。仕事はきちんとやってるらしいんだけど、家に帰るとあんな感じでさ。」


「そっかぁ…。」


かける言葉がなかった。

孝之くんはあたしなんかよりもずっと苦労してた。

逃げてたあたしとは違う。


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