年下の彼氏
あたしの家族はいたって普通で、幸せそうにも見えるし苦労が多そうにも見えると思う。
見えるといってもめったに他の誰かが気付くことはない。
皆同じ、自分のことで精一杯で周りをじっくり見ている暇なんてない。
この世の中の人はみんなそうだ。
孝之くんの家族に何があるのかは分からないけれど、他の人が気付かないことがあるんだと思う。
後は今日ここに来たあたしがこの家族の中のどこまで入りこんでいいかってことだ。
「やぁ、菜月ちゃんだね。」
リビングに入ると明るい光が目に入ってきた。
廊下の光とは別にリビングは優しい明るい光。
赤いソファーの上にはあのお父さんが座って手を振りこちらを見ていた。