年下の彼氏
「この前はすまなかった。私はどうかしてたんだ。君のおかげで助けられたよ。ありがとう。」
見るからに頑固そうな孝之くんのお父さんは目尻を緩めた。
あたしに言ってくれる言葉はとても優しくて安心した。
あたしが孝之くんをかばったおかげでお父さんは元の優しいお父さんに戻ってくれた。
そう彼は言っていたっけ。
「いえ、あたしは何もしてません。」
手を横に振った。
隣で孝之くんが笑っているのを見て、あたしはほっとしたんだ。
「お茶でも飲んでいってね。今用意するからね。」
お母さんは優しく笑うとキッチンへ向かって行った。
「オレの部屋来る?」
「へ?」
ドキドキが止まらない。
別に変な意味じゃなくて。
親だって居るし。
今は友達として家に呼ばれただけだし。
自分の心に言い聞かせた。
「たかちゃん、お茶取りにきてー。」
廊下を歩いているとお母さんの声が聞こえてきた。
孝之くんがキッチンに向かおうとしたとき、ふいに手がのびた。
あたしの手は孝之くんの服の裾を掴んでいる。
「あたしが取りにいくよ。孝之くんは先に行ってて。」
彼は、おぅと頷いて前を歩いていった。