年下の彼氏
「あらぁ!ごめんね。菜月ちゃんに取りに来させちゃって。」

「いえ、あたしから言ったんです。」

そう、なんて言いながら暖かそうな紅茶をポットに容れた。

やわらかい、ダージリンの香りにドキドキは抑えられていく。



「あの子が女の子を家に連れてくるなんて初めてなのよ。今までは私やお父さんがなんと言おうと誰も連れて来たことはなかったんだから。」

「えっ。」

お湯の湯気が上に上に膨らみながら消えていく。



最初に彼に会った時に思った。

中学3年にしては顔立ちがはっきりしていて

奥が深い茶色い瞳、軽く思わせるような茶色いワックスで上げた髪。

だるそうなだぼだぼのジーンズ、会うたびに変わるアウターとインナー。

首もとからちらっとのぞらせるシルバーアクセ。

女心をくすぐる淡い香水の香り。

ごつごつした手。広い肩幅。

全部の体のパーツが女の匂いを漂わせていた。

絶対に彼女がいるだろうと。


でもお母さんが言うには彼女居たことなかったのかな?







長いと思わせるほどの廊下を通り、1番奥のドアをノックする。

「は、入りますっ!」

おぼんを持っているせいか、ドアノブが上手く掴めない。

苦戦しているとすぐにドアが開いた。

「言ってくれれば開けるのに。」


あたしからおぼんを奪って部屋の机の上に置いた。


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