年下の彼氏
「あたし、そろそろ帰るね。」

沈黙に耐え切れず、さっと立って時計を見つめた。

年下の男の子っていったらお正月に会う親戚の男の子ぐらいでこんな真近で見たりするのってあまりない。

それに菜月自身、今まで年下のことは興味なしだったので余計に意識してしまう。




「じゃ、送る。」

孝之くんもその場に立ってあたしの背丈を余裕で越す。






ろくな話が出来なかったな。

駅前の道路の横断歩道を歩いている時に思った。

なに年下に緊張してるんだか…。


「オレさ、図書館の本の中で1番好きな本があってさ。」

信号が赤に変わりそうでちかちかなっている。
小走りになってサラリーマンを追い越した。


「○CRY RAIN○っていう本なんだ。」

はっとした。
あたしが気に入ってる本だ。

「かなりベタなんだけどさ、まじいいんだ!俺あーゆう話好き。」

同じ…。

「あたしも…。」


言おうとした時、ふいに涙がこぼれた。

理由はよく分からないけど

この人しかいない。あたしには。

この人しかありえないんだ。

そう思ったんだ。





孝之くんはあたしに気付いたのか、

少し前をずっと歩いてた…。




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