リリック・ラック

もっともらしい理由。
だけど半分は嘘じゃない。

恵が告白を決意してまで誘ったデート。
それを邪魔することはどうしてもできない。


「それはそうだけど、でも、柚……」


本当に不安なんだろう。一緒に言ってあげると、思わず言ってしまいそうになる。

だけど、相手が恵だから。


「本当に、だめ? ね、柚……」


相手が、恵だから。
あたしが、恋をしている奴だから。

あたしは。


「行けない。あたし、二人のデートなんか見たくない」

「……柚?」

「あたしも、恵が好きなんだ」


放課後の誰も居ない教室に、あたしの取り返しのつかない言葉が響いた。

そして言葉に乗ったあたしの気持ちは、しばらくユラユラとあたし達の間に漂った。
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