リリック・ラック
気づけば涙が溢れていた。
「柚、どうして……?」
「沙綾は分かってない。何てことない言葉で、人が傷つくこともあるんだよ」
合点がいかないようで、沙綾は眉間にシワを寄せる。
その瞳はうっすらと水を湛えているようにも見えた。
「恵んで貰ったって嬉しくない。あたし、そんなに可哀相?」
普段とは違う強い口調に、沙綾が戸惑っているのが分かる。
だけどあたしの口は止まらなかった。
「恵のことだって、まるでモノみたいに言わないで。恵の気持ちもちゃんと考えてあげて」
一気に吐き出して、少し呼吸が荒くなる。
あたしは鞄を引ったくるように持って、バタバタと教室を出た。
「柚!」
沙綾の呼び止める声を振り切るように、放課後の廊下を駆け抜けた。