リリック・ラック

随分と走った。
学校からはだいぶ離れた駅前の大通りに出て、あたしはやっと足を止める。

泣きながら走ったものだから、息が苦しい。

涙のたまった目尻を右手で拭う。
さっき沙綾をぶってしまった右手。

沙綾、痛かったろうな……。
あの綺麗な肌に、跡が残ってたらどうしよう。

罪悪感はとめどなく沸き起こる。
だけどどうしても、謝る気にはなれなくて。


『若狭君はいらない』


酷いよ、沙綾。
恵の頑張りを無駄にしないでよ……。

落ち着いていた涙がまたじわりと滲む。
慌ててゴシゴシとこすっていると。


「また泣いてんのか、ポチ」


目の前に立っていたのは、先に帰っていたはずの麗ちゃん。


「いつもタイミング良いね、麗ちゃんは」
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