リリック・ラック
人の波をかきわけながら麗ちゃんはぐんぐん進む。
右も左も分からなくなってしまってるあたしは、握った麗ちゃんの手だけを頼りに進んでいく。
華奢な身体つきなのに、思いがけず大きな手の平。
頭をぽんって叩かれることはあるけど、こうして握られるのは初めてだ。
やっとの思いでステージの真ん前までやってくると、握っていた手を離された。
隣を見上げると、ステージから零れたスポットライトが麗ちゃんの銀色の髪に反射している。
あたしの胸がトクトクと響くのは、アンプから飛び出す低音のせいだろうか。
あたしの視線に気づいてか、麗ちゃんがこちらに目を向ける。
自然と目が合って、あたしはニッコリと笑った。