リリック・ラック

・近くて遠い


楽しかったライブの余韻に浸りながら、家までの道をぽつぽつと歩く。

帰ったらメールでもう一度お礼を言おうと思って携帯を開く。

すると待受画面の隅に、着信ありのマークが見えた。

着信はワカメからだ。


不意に、胸がざわざわと騒ぎ始める。

今日はワカメと沙綾のデートの日。きっとこれは報告の電話。


上手くいったんだろうか。
ワカメは、沙綾に告白したんだろうか。

ワカメの電話の内容がデートの失敗でも、或いは成功でも、あたしは喜べない気がした。


一つ大きく息を吐いて、あたしはワカメに電話をかけた。
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