リリック・ラック

『俺、告ったんだわ』


ずんと、重たいハンマーで殴られたみたいに、あたしには堪えた。

いつか来るとは思っていた事実が目の前に現れて、あたしは動揺した。


「そう。……で、どうだったの」


震えそうになる声をぐっと抑えて、冷静に返す。

すると電話の向こうから、わずかに自嘲気味な笑いが漏れた。


『ダメだった。もっと大事な人が居るんだってさ』


ツキンと、鋭い痛みが胸を突き刺す。

沙綾の大事な人。
それはきっと別の男の子って訳じゃない。

きっとそれは、この、あたし。


『フラれるって、結構キツイんだな、ハハ』


笑ってんじゃないわよ。
辛いくせに。

携帯を握る手に無意識に力がこもる。
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