リリック・ラック
あたしが何も返せずに居ると、ワカメの自嘲的な笑いはしだいに小さくなった。
『……クソ。何で、諦めらんねぇんだろうな』
それはあたしに向けた言葉というよりも、ワカメの自分自身への問い掛けのようだった。
気付けば、家に向かうあたしの足はワカメが住むマンションの方に向かっていた。
しんとした夜の中に、いくつもの窓から明かりが漏れていた。
「外、出れる?」
『今?』
「うん。今あんたのマンションの前」
ワカメは「わかった」と短く返事をして電話を切った。
あたしはマンションのすぐ隣にある小さな公園の、少し錆びたブランコに腰を下ろす。
ギィッと軋む音が、静寂な空に小さく響いた。