リリック・ラック
それから午前の授業をやり過ごし、お昼を食べに学食に向かう。
「やっべ、金欠。ポチ、おごれや」
「あたし日替わり定食にしよ。麗ちゃんは?」
「カレー」
「おい、無視してんじゃねぇよ」
意識的になのか、誰も沙綾の話題に触れない。
右から左に抜けてしまうような、そんな浅い会話で間を埋めた。
本当は心配で堪らないのに。
そしてそれはきっと、ワカメや麗ちゃんも同じはずなのに。
これじゃ、ダメだ。
あたしもワカメも、沙綾とちゃんと話さなくちゃいけないんだ。
定食を順調に食べ進め、最後に味噌汁を飲みきってあたしは言った。
「あたし、放課後に沙綾んち行ってみる」
ワカメと麗が食べている手を一旦止めて、あたしに視線を寄越した。
頼むわ、ってワカメが言うと、麗ちゃんも同意するように頷いた。