リリック・ラック


大きな門の向こうには、よく手入れされた広い庭が見える。

門のすぐ横にある、すっかり押し慣れたインターフォンに手をかけた。


『柚ちゃんじゃない。すぐ開けるわね』


インターフォンのカメラからあたしの顔を確認したのだろう。
扉を開けてくれたのは沙綾のママ。


「沙綾、具合が悪いみたいで。柚ちゃんが来てくれたら喜ぶわ」


後でお茶持っていくわね、と沙綾ママはあたしを沙綾の部屋へ促した。

広いお家の中をあたしは迷うことなくまっすぐ進み、一つの部屋を選んでノックした。


はい、と控えめに返事がして、あたしは扉を開ける。
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