リリック・ラック

沙綾の部屋は可愛らしく、だけど品の良い家具で揃っている。

あたしのベッドよりはるかに大きなそれに横になっていた沙綾は、あたしの姿を認めて、パッと驚いた顔を見せた。


「柚……」

「沙綾ってば、仮病なんでしょ?ダメじゃん」


あたしはベッドのそばにあるソファーに腰をかけた。
柔らかくてふわりと身体が心地好く沈む。


「ごめんなさい、私……」

「わかってるよ。あたしや、ワカメに会いづらかったんでしょ?」


沙綾は少し躊躇ってから、こくりと頷いた。

沙綾の綺麗な目の下は、いつもより少し腫れている。

きっとたくさん泣いたんだろう。

あたしの胸がツキリと痛んだ。
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