リリック・ラック

「明日は学校来るよね?」


沙綾はそれには答えずに俯いた。
しなやかな黒髪が肩から垂れる。


「心配してるよ、麗ちゃんも。……恵も」


ぴくり、と沙綾の肩が小さく震える。

きっと沙綾の中では、あたしへの遠慮と、ワカメへの好意が交錯している。

ワカメからの告白を断ることで、後者を諦めると決めたんだろうけど。

きっと、まだ本当の意味では諦められていない。

その結果、ワカメにも、あたしにも会いづらくなっちゃったんだ。

その気持ちは、なんとなくわかる。

だけど――


「あたし、怒ってるんだ」


あたしがそう告げると、沙綾は少し怯えるみたいに、遠慮がちに視線を寄越した。
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