リリック・ラック

「遠慮なんかされたくない。あたしたちは、親友なんだから」


張り詰めた糸が切れてしまったみたいに、沙綾はハラハラと泣き出した。

あたしも目の奥がじわんとしみたけど、ぐっと堪えた。


「ごめん、柚。ごめんなさい……」


あたしはもういいよ、という意味を込めて首をフルフルと振る。


「ちゃんと、学校来なきゃダメだからね?」


あたしは小さな子供に諭すみたいに言う。
沙綾はコクコクと何度も頷いた。


「だけどね、柚。嫌じゃない?私が若狭君を好きなままで居て……」


嗚咽を交えて投げ掛けられた問いに、あたしは少し黙ってしまう。

このまま沙綾がワカメへの気持ちを諦めなければ。

きっと二人はそれほど時間をかけずに付き合い始めるだろう。

正直あまり見たくない。

だけど。


< 137 / 142 >

この作品をシェア

pagetop