リリック・ラック
『わんちゃん、かわいいね』
門の外から覗いてあたしがそう声をかけると、女の子は驚いたような顔をした。
『その子、なんて名前なの?』
何も言わないで黙ったままの女の子に、あたしはまた聞いた。
『……リリー』
女の子がぽそりと教えてくれた犬の名前。
それは子供心になんだかオシャレに聞こえた。
『あなたは何て名前なの?』
あたしがにっこりと笑ってそう聞くと、女の子は怖ず怖ずとまたぽそりと答えた。
『……サーヤ』
それはまたあたしにとってとてもオシャレな響きで、馬鹿なあたしは彼女は外人なのかと思ってしまった。