リリック・ラック
ドライなベビーフェイス
・カノジョ
翌日の朝はなんだか緊張した。
沙綾やワカメの前でうまく演技できるかどうかが心配で。
それともう一つ。
今日から麗ちゃんと登下校を一緒にすることになったのだ。
夕べメールで相談して、付き合ってることを一番アピールしやすいのが登下校だという結論に至った。
だから今朝から時間を合わせて、一緒に登校するってわけ。
麗ちゃんのカノジョとして。
「カノジョなんか、なったことないのにになー」
オレンジの髪をワックスで無造作に散らしながら、ポツリとこぼした。
カノジョか。
あたし、ニセモノだけど麗ちゃんのカノジョになるのか。
なんだか胸の奥の方がこそばゆくって、ブラウスの上から胸のあたりを掻いた。
ふと気づけばそろそろ約束の時間。
あたしは慌ただしく鞄をつかみ、家を出た。