リリック・ラック
あたしが声をかけると、不機嫌そうな顔がこちらを振り向いた。
無愛想な彼の名は若狭恵。ワカサメグミの頭文字からもじって、ワカメ。
「朝からうるせぇな、ポチ」
ゆるゆるとウェーブした暗めのモスグリーンの髪。その隙間から見える切れ長い目が、ジロリとあたしを見る。
「進級しても相変わらずのワカメヘアーなんだね」
ワカメって呼ばれることを嫌がるくせに、狙ったようなワカメヘアー。
ぷぷぷっと笑いながらあたしが言うと、恵はあたしの首に腕を絡めて絞めてきた。