リリック・ラック

お昼休みを終えて教室に戻ると、嬉々とした表情の恵がこちらにやってきた。


「でかしたぞ、ポチ!」


そう言ってあたしの肩をバシバシ叩く。


「痛いってば、もう!」


あたしは恵の手を鬱陶しそうに払う。

そんな恵に、隣で見ていた沙綾は少し怯えていた。


「沙綾、大丈夫だよ。沙綾に危害は加えさせないからね」


あたしが声をかけると、恵はさっと向き直り、さも紳士的な笑みを浮かべた。


「よろしく、城崎さん。俺は若狭恵」

「さっき話した友達って、こいつのことなんだ」


あたしがそう説明すると、沙綾は不安げに顔を曇らせる。
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