リリック・ラック
恵も沙綾も出番は終わり。
あたしと麗ちゃんもリレーの出場までは時間がある。
だからしばらくクラスの応援に徹することにした。
うん。ハチマキ締めると気合いが入るなぁ。
あたしは即興でクラスの応援歌を作り、クラスメイトをリードして応援を楽しんでいた。
ふと、隣に居る沙綾が妙に静かなことに気づく。
沙綾の方に振り向いて、あたしはギョッとした。
「沙綾、どうしたの。すごい汗だよ」
額には汗が滲み、顔色も悪い。
「具合悪い?」
「ん……大丈夫……」
言い終わらない内に、沙綾の身体が大きくふらついた。
「沙綾!」
反射的に伸ばしたあたしの腕より先に、沙綾の身体を支えた筋肉質な黒い腕。
恵が沙綾を抱きとめていた。