リリック・ラック
沙綾は身体に力が入らないようでぐったりしている。
「俺、保健室に連れて行く」
恵はそう言って沙綾をさっと抱き上げた。
これは女子の憧れ、お姫様だっこだ。ワカメのくせに生意気な。
なんて言っている場合じゃない。
「あたしも行く!」
「俺も行くわ」
麗ちゃんもあたしの後に続く。
ざわめく他のクラスメイトに「心配いらないよ」と声をかけて、あたし達は保健室に向かった。
心地好く温度調節された保健室のベッドに寝かされ、沙綾は少し落ち着いたようだ。
夏前とは言え日差しはキツイし、体力の無い沙綾は参ってしまったらしい。
辛そうに呼吸する沙綾に胸が痛む。
もっと早く気づいてあげれていれば。
親友なのに、あたしは何もできなかった。