リリック・ラック

「水分摂らせて、安静にしていれば大丈夫よ」


保健室の先生はそう言って、沙綾の頭の下に凍りまくらをひく。

その時保健室の扉が開き、一人の生徒が入って来た。


「せんせー、来てくれない?クラスの人がケガしたんだけど」


はいはい、と先生は救急箱を持ち上げる。


「じゃあ一人だけ着いててあげて、あなた達もグラウンドに戻りなさい」


そうあたし達に声をかけて、先生は呼びに来た生徒に着いて行った。

保健室に残されたあたし達を、一瞬の沈黙が包む。


「あたし、着いてるから。二人は戻っていいよ」


あたしがそう言って沙綾のそばに寄ろうとすると。


「ポチ」


沙綾を見守る視線をそのままに、恵が呼びかける。
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