リリック・ラック
動揺しているあたしとは対称的な、落ち着いた恵の声が響く。
「頼む」
なによ、カッコつけちゃって。
それに何なのよ。
何でこんなに胸がざわつくの。
「……でも」
「行くぞ、ポチ」
ずっと黙っていた麗ちゃんが、あたしの言葉を遮ってあたしの手を引いた。
「ちょっと、麗ちゃん?」
抵抗しようとするも、あたしの身体は簡単に引っ張られていく。
保健室の扉から身体が全部出てしまう直前、あたしの目に映った光景。
真っ直ぐに沙綾を見つめる、恵の横顔。
なによ。
なんで、そんな顔するの。
まるで、本気で恋してるみたいじゃない。