リリック・ラック
あたしの瞼に、さっき見た恵の横顔がちらつく。
あたしと馬鹿やってる時とは違う、男の人の顔をしていた。
「……は、あはは」
込み上げたと言うよりは、絞り出してあたしは笑った。
「何、急に」
「ワカメのくせに生意気だなって、思ってさ」
極めてあたしは明るく言う。
麗ちゃんはさほど興味なさげに「そうだな」って呟いた。
あたしは立ち上がり、ぐっと背筋を伸ばした。
見上げた空は眩しくて。
あんまり眩しいもんだから、あたしは目をつむった。
あたしの心の奥底にある、小さなかたまり。
あたしはきっとそれに気付いちゃいけない。
だから、あたしは、目をつむった。