リリック・ラック

なんか、変。
それはあたし自身が一番実感してる。

なんだか恥ずかしくて、俯くあたし。


「あ」


俯いた頭の上で、麗ちゃんの声がして、あたしはまたパッと顔を上げた。


「……あ」


麗ちゃんの目線の先にあったのは、笑い合う恵と沙綾の姿だった。

なんだか、すうっと胸の中に風が吹いた。そんな感じ。

恵はあたしと居るときよりも男らしく。

沙綾はあたしと居るときよりも頬を赤く。

あたしのよく知る二人が、あたしの知らない顔をして歩いている。


「ポチ」


不意に麗ちゃんに名前を呼ばれ、あたしはハッと我に返る。


「なんか、放心してた」

「やば。立ったまま寝てたかも」


笑ってごまかそうとしたけれど、麗ちゃんの目はそれを許してくれなかった。
< 68 / 142 >

この作品をシェア

pagetop