リリック・ラック
なんか、変。
それはあたし自身が一番実感してる。
なんだか恥ずかしくて、俯くあたし。
「あ」
俯いた頭の上で、麗ちゃんの声がして、あたしはまたパッと顔を上げた。
「……あ」
麗ちゃんの目線の先にあったのは、笑い合う恵と沙綾の姿だった。
なんだか、すうっと胸の中に風が吹いた。そんな感じ。
恵はあたしと居るときよりも男らしく。
沙綾はあたしと居るときよりも頬を赤く。
あたしのよく知る二人が、あたしの知らない顔をして歩いている。
「ポチ」
不意に麗ちゃんに名前を呼ばれ、あたしはハッと我に返る。
「なんか、放心してた」
「やば。立ったまま寝てたかも」
笑ってごまかそうとしたけれど、麗ちゃんの目はそれを許してくれなかった。