リリック・ラック
「パパが買ってくれたの」
「沙綾のパパはやっぱりセンス良いね。いいなぁ」
あたしが着けている腕時計は、オモチャみたいなプラスチックの真っ赤な時計。
あたしもそんな華奢な時計が似合うようになれればなぁ。
ぼんやりと思いながらじっと沙綾の時計を見つめた。
「じゃあ、柚にあげる」
あたしの視線が物欲しげに見えたのか、沙綾はそう言って時計を外そうとした。
あたしは慌てて右手で沙綾を制す。
「そうじゃないでしょ、沙綾」
あたしの言葉に、沙綾はハッとしたように手を止める。