リリック・ラック
「それ以来、沙綾は何でもすぐにあげちゃわないで、貸してあげるねって言うようになったの」
あたしと沙綾の昔話。
麗ちゃんはあんまり興味がなさそうだったけど、最後まで聞いてくれた。
「沙綾、優しいの。それでつい自分を犠牲にしちゃうんだよね」
自分が我慢して、人に譲ってしまう。
そういう気持ちも時に必要だけど、そればっかりじゃあんまりだ。
「……ジュースでも買ってやろっかな」
ぽつりと言う麗ちゃんに、あたしは首を傾げる。
「ノートのお礼に」
麗ちゃんはさっき必死に写していたノートを掲げて言った。
あたしは嬉しくて笑った。