リリック・ラック
小さい頃からずっと一緒だった沙綾。
昔と全然変わらない、優しくてとっても良い子。
「たまにはワガママ言ったって良いのに」
あたしはそう呟いた。
目線の先にはまた沙綾に話し掛ける恵の姿がある。
ざわざわと胸の奥から沸き上がる嫌な感じ。
あたしにはいつもからかったりプロレス技かけたりするだけなのに、沙綾にはいつも優しく話すんだ。
何あいつ。
ほんとムカつく。
ふと、気付く。
「あたしは、こんなにもワガママだっていうのに」
麗ちゃんは訳がわからないという顔をして、だけどふわりとあたしを撫でた。
「人間なんてだいたいがワガママなんだよ」
「ふふ。そうだね」
あたしは笑った。