リリック・ラック
「ポチ? 何やってんだ?」
俯くあたしの頭上から、聞き慣れた声が振ってくる。
「……ハロー、麗ちゃん」
「ハローじゃねぇよ。ふざけてんじゃねぇ」
首におっきなヘッドフォンを引っ掛けて、全身モノトーンでまとめた麗ちゃんが、あたしを見下ろしている。
「いくら犬だからって、こんな所に転がってたら通行の邪魔だ。馬鹿」
「はは、麗ちゃんはいつでも口が悪いねぇ」
口では毒を吐きながらも、道の真ん中にうずくまるあたしに、麗ちゃんは手を差し延べてくれた。
あたしはその手に自分の手を重ねる。
麗ちゃんの手の平が温かくって、あたし自身の手が冷たくなっていたことに気付いた。