リリック・ラック
麗ちゃんの手の平の温かさが、なんだか胸に沁みる。
「……何、泣いてんだよ」
あたしは気付けば泣いていた。胸が軋むように痛い。
あたしは麗ちゃんの手を離さないまま、小さく呟く。
「……あたし、恵が好きかもしれない」
言葉にすると、どんどん自分の中でリアルになっていく。
気づきかけていた、だけどずっと目を背けていた気持ち。
麗ちゃんはわずかに驚いたように目を見開いて見せたけど、黙って聞いていた。
「沙綾も、同じなんだって……」
「そうか」
麗ちゃんはただ優しく相槌をうつ。
あたしは麗ちゃんの手をきゅっと握った。
「麗ちゃん。恋って苦しいんだね……」
あたしのそんな呟きは、通り過ぎる人達の足音に紛れていった。