リリック・ラック
あたしはギュッと目をつむり、無理矢理に涙を止めた。
閉じた瞼に浮かぶのは、大好きな沙綾と小憎らしいワカメの笑顔。
「麗ちゃん。あたし、とりあえず逃げないことだけ頑張る」
麗ちゃんはさほど興味なさげに軽く頷く。
あたしはニッと笑ってみせた。
「あたしはあたしの気持ちとちゃんと向き合うよ」
それからどうしたいかは、その後で考えよう。
それで良い。
別に期限が決まっている訳でも、明日世界が終わる訳でもないんだから。
「まあ、それはそれで難しいけどな」
麗ちゃんは言う。
「俺も、少しは頑張らねえとな」
ぽつりと麗ちゃんは何かを呟いたけど、あたしはそれを聞き取ることはできなかった。