リリック・ラック
初めて知ったこの気持ちと向き合うこと。
それは思った以上に辛くって、難しいことだった。
そのことを実感するまでに、時間はかからなかった。
翌週の月曜日。
いつものように歩いて登校していたあたしの後頭部を、突然誰かが小突く。
「いたっ!」
振り向くと今日もばっちり決まったワカメヘアー。
「なにすんのよ、ワカメ」
「お前のオレンジ頭は寝起きの視神経に響くんだよ」
そう言ってわしゃわしゃとあたしの髪を乱すワカメ。
ふわりと香る、香水。
頭に感じる、ワカメの手の平の感触。
乱されたのは髪だけじゃなくて、心拍数もだ。
カッと頬が熱くなるのを感じて、あたしは顔を背けた。