リリック・ラック

イライラしちゃ駄目だって、心の隅の冷静な自分が制止する。

だけど、どうしたらいいの?
何て答えるのが正解なの?

何でも良いから何かしろって麗ちゃんは言った。
それであたしはちゃんと向き合ってみるって答えた。

向き合うって、どういうことなんだろう。

頭の中で、麗ちゃんとの会話がぐるぐるまわる。

そうしてやっと絞り出した答えは。


「沙綾、あたし行けない」


驚いたように、パチと瞳を開く沙綾。

だけどその表情はすぐに悲しいものに変わる。


「……どうして?」


どうして?
そんなの、決まってる。
だけど言いたくない。


「……せっかく誘ったワカメの気持ち、考えてやらなくちゃダメだよ」
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