通行人B
わけの分からないまま、俺はソイツに引っ張られながら走った。
俺は別に力が弱いとは思わないんだが、案外コイツの力が強く。
振りほどけないまま、万引き少年を追いかけ追いかけ・・・
って、あいつら足早っ!
陸上部員かよ!
俺も一応運動部員ではあるけどさ。
なんか悔しいな、おい。
ハンデっつーか、コイツに掴まれてるからか!?
見る見るうちに、万引き少年たちは遠ざかり、俺の隣には息を切らしたやつがいる。
・・・・・・いや、捕まえれないんだったら最初から無謀なことは止めようぜ?
しかし、俺がそうツッコム前に、シノノメ ソーヤは俺の腕を離し、叫んだ。
「こんなことで、僕の正義は屈しないッ!」
屈しろよ。
屈しなくてもいいから人巻き込むなよ。
幸いと言うか周りには誰もいなくて、
シノノメ ソーヤを変な眼で見るのは俺だけだったが。
俺はツッコミを放棄する。
こんなやつに関わっていられるかってんだ!!
そろそろと後退し、シノノメ ソーヤが振り向きそうにないってことを確認すると、
一目散に駆け出そうとして
――ガシャンッ
鈍い破壊音に邪魔された。
「は?」
見れば、足に引っ掛けたのか。
道端に置いてある・・・ど―そじん?道祖神っていうのかこの置物を壊したシノノメ ソーヤがあたふたしていた。
・・・正義言ってたやつが何やってんだよ。
一応それ、街の管理下に置かれてるやつじゃないのか?
なんか普通の、教科書に載ってるような地蔵さんや丸い石と違って。
精密な龍の形しているからって、街の広報に載ってたぞ。
他にも、南に鳥、西の虎、北の亀がセットでのってたけど。
「どどど、どうしようB君!」
「しるか。俺は関係ない。あとBじゃない」
「そ、そんな殺生な!君もここにいたじゃないか!!」
「なんだよその理不尽!ここにいたから同罪だったら、銀行強盗の人質も銀行強盗と同罪か、ゴラァ」
柄が悪いのは仕様だ。
相手によってはちゃんと礼儀わきまえる子なんだけど、俺。