通行人B

そんなこんなで、シノノメ ソーヤに付き合っていたから気付かなかった。
こわれたはずの、龍の目が青く光ったかのように。

「まあいい、壊してしまったものは仕方がない」
仕方なくねぇよ。
「正義を実行するためには、多少の犠牲はつきものだからな」
そう言うのはちゃんと捕まえてから言え。
「かくなる上は、これと同じものを作って置いておく。これで問題ないな!!」
「最低じゃねえかソレッ!」


――カッ


俺の怒声に呼応するように、閃光弾が炸裂したかのような光が突然、
壊れた龍から発せられ、辺りを包みこんだ。
本当に閃光弾なんて食らったことなんてないけど。
あまりの眩しさに俺は、いや俺達は眼を瞑った。
けれど、訳の分からない出来事はそれだけで留まらず。

――がくんっ

体が不意に重くなり、後方へ強く引かれる感覚が。
頑張って足に力を込め踏ん張っているが、抵抗は虚しく。
俺と・・・眼をちろっと開けてみたところ例のシノノメ ソーヤも同じく。
何かに吸い寄せられていた。
実際、俺が抵抗していたのはほんの数秒に満たないのかもしれない。
そして、そいつらはどんどん遠くなって。
視界は暗く黒くなって。
俺は、わけも分からず叫んだ。

「俺何にも関係ねぇー――――――――――――っ!」

怨みがましい言葉を残して消えた俺や、変に芝居じみた美少年―――不本意ながらシノノメ ソーヤのこと―――を、もし他の通行人がいたらどう思っただろう。
なんかの集団幻覚かドッキリだと決めつけただろうな、きっと。
でもっ、仕方ないじゃんか!
一体俺に何の非があるってんだっ!!




・・・・・・―――――・・・―――――――。

それから、よく分からないうちに何かの力は急に抜けて。

「うぎゃ―――――――っぐぇ」

地面に、落とされた。

あ。ちなみに、前の「うぎゃ」が落とされた時の声で。
後ろの「ぐぇ」がシノノメが俺の上に落ちてきやがった時の悲鳴。
いや、一応・・・念のために、ね。

「おっと・・・おや、ありがとう通行人B君」

俺の上で、奴はそうのたまうと、ゆっくり俺から降りて。
俺の上体を起こすのを手伝ってくれ。
自分も俺の隣に座って。
俺らは辺りを見回し。

冒頭に戻る。


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